導入事例・ブログ
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公開日 : 2022/09/09 / 最終更新日 : 2024/03/05
ナレッジマネジメントとは何か、どのように企業活動に活かしていけば良いのかとお悩みではないでしょうか。
ナレッジマネジメントとは、企業内に分散している知識・経験・ノウハウを共有することで、業務の効率化や生産性を高めるための経営手法の一つです。トップ営業マンの知識やノウハウ、技術的熟練者の経験や勘といった今まででは浸透しづらかった知識の共有が求められています。
本記事では、ナレッジマネジメントの意味や手法について解説していきます。上記のような知識は伝えたくても伝えられないものとして捉えられていましたが、デジタル技術の進歩やビジネスへのAI活用が進み、ツールを利用したナレッジマネジメントが普及するようになりました。
記事内ではナレッジマネジメントツールの選定ポイントもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ナレッジマネジメントとは、企業内に分散して保存されている知識や情報、従業員が個人的に身につけ秘めている経験・ノウハウ・技術を会社の資産として共有し、会社全体としての効率性や生産性を高めていくことを目的とした経営手法です。知識管理や知識経営などと呼ばれています。
ナレッジマネジメントの概念としては、1996年に一橋大学国際企業戦略研究科の教授である野中郁次郎氏が論文の中で言及したことが発端とされており、日本発信の経営手法として注目が集まりました。それまでも社内に蓄積された知識やノウハウを共有する取り組みというのはあったそうですが、野中氏の考え方が違うところは、知識を共有することで新たな知識や事業運営ノウハウを生み出し続けられる経営を目指した点にあります。知識や経験の共有と創造の社内循環を作り出すことが、ナレッジマネジメントに取り組む最終的なゴールとも言えるでしょう。
具体的にどのようにナレッジマネジメントを実施するかについてですが、キーワードとなるのは分割と再定義です。例えば、ナレッジマネジメントで最初におこなうのが知識についての分割と再定義です。事業運営で使われている知識を2つ(形式知・暗黙知)に分割し、特性ごとに意味を与えます。今まで一緒くたに考えられていた知識を分割・再定義することによって、分散されていた知識が共有され会社の資産に移り変わっていく変化の様子を分かりやすく表現できるようになりました。
ノウハウや経験といった知識そのものだけでなく、知識を資産に変化させ、ビジネスに活用していく過程さえもそれぞれ分割・再定義することで、知識を事業に活用するための具体的な道筋が見えてくるはずです。
日本でナレッジマネジメントが広がり始めたのは1990年代後半頃からです。
日本でナレッジマネジメントが注目された理由の1つは、事業を続けていく中で将来予測が難しくなったことです。かつての物不足の時代は機能性の高い商品を販売すれば多くの注目を集めることができたため、宣伝をするほどに売上がたち、事業予測が立てやすい時代でした。ですが、物余りの現代においては、良い商品を販売するだけでは売れません。顧客ニーズが複雑化しているため、正解が分かりづらくなっているのです。どの市場も飽和状態であるため、挑戦や改善を繰り返して新たな市場を創出する必要に迫られているのです。その挑戦の過程で得られた知見やノウハウを次の市場開拓に活かすため、知識を集約した組織的な事業運営が不可欠となっています。
終身雇用や年功序列など、かつて日本の成長を支えた労働形態が崩壊していることも、ナレッジマネジメントに注力せざるを得ない理由となっています。終身雇用が失われているということは、優秀な人材が定着しない事態を引き起こすからです。新卒一括採用などで人材を確保し、全体の2割の社員が会社の事業を引っ張る役割をするのがかつての事業パターンの一つではありました。しかし、転職が比較的容易になりつつある環境の変化もあり、事業が魅力的でないと簡単に人材が離れていってしまう時代に突入しているのです。優秀な人材や知見が集まるような、魅力的な事業モデルの構築が求められています。
国が副業を後押しするように、働き方の変化もみられるようになりました。正社員だけでなく、フリーランスという働き方も世間で認められつつある雰囲気があります。会社としては人材育成の時間と資金を省くことができるため、双方メリットのある働き方ではあります。ですが、知識やノウハウの蓄積という面では、会社外の力を利用しているため、社内の知識やノウハウは蓄積しづらい環境でもあります。会社として外部の知見を社内でも共有できるような仕組み作りに取り組む必要が出てきています。
業務のIT化・デジタル化が進んだことで、社内での知識共有がしやすくなったことも、ナレッジマネジメントが重要視され出した要因です。かつては知識やノウハウの共有といえば、「見て学ぶ」「見よう見真似まね」が主な方法で、情報の浸透が個人のスキルや指導方法に依存してしまい、会社全体での成果と繋がりにくい環境でした。ですが、成果を出している従業員の行動や熟練者の技術を数値化して統計・分析することで、同じ経験値・スキルレベルまで到達しなくても、一定の成果獲得を再現できるようになっているのです。
ナレッジマネジメントを実施するために、2つの基礎理論を確認しておく必要があります。2種類の知識と4つの組織的知識創造理論です。
知識はその特徴から2種類に分けられます。
形式知とは、言葉や文章で表現された知識やデータのことです。マニュアル、成功事例、行動データなどが形式知にあたります。形式知は客観的に理解できる表現の仕方をしているので、社内で知識を共有するには形式知の状態にすることが望ましいです。
形式知と反対の意味を持つ知識が暗黙知です。個人が持つ蓄積された経験や知識、ノウハウ、勘といったものが暗黙知にあたります。知識を持つ本人だけが鮮明に理解しており主観性が強いものであるため、共有するには時間や受け取る人の感性に依存してしまいます。組織全体に暗黙知を共有したい場合は、言語やデータにして形式知に形を変化させる必要があります。
形式知と暗黙知の変換をどのように実施するのかを、4つの要素で解説します。
まずは、知識の全体像を見ていきましょう。組織内の知識がどのような流れで作られているのかを知るのに役立つのが、SECIモデルです。4つあるサイクルの頭文字を取ってSECI(セキ)と呼びます。
< 知識創造のサイクル >
暗黙知-形式知-暗黙知のサイクルを作ることで、知識やノウハウを蓄積しつつ、新たな知識を創出する循環を生み出します。
SECIモデルの各段階において、知識が移動・変換・共有される場所を設ける必要があります。共同化をするならオフィスが必要ですし、表出化の場合はプレゼンやミーティングできる場が適切と言えるでしょう。連結化ならチャットグループ、内面化では作業場や実践現場となります。
マネジメントをするには既存知識の分類・評価をする必要があります。社内の守るべき知識、変化させるべき知識を確認していきましょう。
< 知識資産 >
知識共有を行うためには、経営者や管理者が積極的に知識を共有できる環境を提供する必要があります。会社にはどのような知識が必要なのか、その知識とは具体的にどのようなものなのか、社員が知識を得た場合の共有する場所はどこなのか、SECIプロセスを実行する方法などを、社員にビジョンとして見せていく必要があります。
ナレッジマネジメントを導入する手法は4つあります。
組織が持つ資本(知識)を戦略策定に使用する手法です。自社だけでなく他社分析も組み入れることで、業務プロセスについて細かく分析できるようになります。
顧客対応から得られた知識を業務プロセスの改善に役立てる手法です。具体的にはコールセンターや問い合わせオペレーターに届いた製品やサービスに関する意見・クレームなどの内容を記録として残し、共有できるような社内業務の仕組みを構築することで、経験がないオペレーターでもスムーズな対応ができるよう体制を整えていくことです。顧客と直接やりとりをできる貴重な場所でもありますから、顧客満足度の向上など業務改善が結果に繋がりやすい手法ともいえます。
成果を出している社員の行動プロセスなどの暗黙知を体系化し、成果の出やすい営業マニュアルとして作成することで形式知に変換します。他社員の努力の方向性を調整することができるため、組織全体のスキルレベルの底上げに繋がります。成果を出している社員のプレゼンテーションの機会を設けて知識共有するケースが多くありますが、本人のプレゼンテーションとなると主観的な評価が多くなり再現性が小さくなる恐れもあります。第三者評価を入れたり数値やデータで成果の根拠を調査するなど、社内全体での共有をする場合はより客観的な評価をする必要があります。
会社についての専門知識を外部の人でも理解してもらえるようまとめて変換していく手法です。例えば、製品取り扱いに関するFAQなどが該当します。FAQとはよくある質問を集めたもので、会社サイトや製品ページに掲載するのが一般的です。FAQは顧客の自己解決を促す役割を果たしているため、顧客にとっては問い合わせの手間を省いて問題を解決できるため満足度の向上に繋がりますし、会社にとっては同じ内容の問い合わせに対して人員を割かなくてよくなるので、担当者の負担軽減にもなります。
ナレッジマネジメントで得られる効果や、導入の際のデメリットを見ていきましょう。
ナレッジマネジメントで得られる最大の効果は業務が効率化し生産性が高まることです。知識を共有することは組織力の底上げに繋がるだけでなく、業務の無駄も省くことができます。また、優秀な社員の知見を効率的に社内に浸透させることができれば、人材育成の資金的・時間的負担も減らすことができるはずです。ナレッジマネジメントで社員自ら成長できる環境を整えてあげましょう。社員教育が効率的に進めば、間違いなく顧客へのサービス提供の質も高まります。
メリットの大きいナレッジマネジメントですが、デメリットもあります。システム導入に費用がかかることと、社員が新システムに慣れるまで時間がかかることです。必要ないシステムを導入するわけにはいきませんから、導入しないことで負担するコストと導入するために負担するコストを比較することが大切です。また、費用をかけてシステムを導入しても、社員が使いこなせなければ逆効果になってしまいます。徐々に浸透していくよう、スモールスタートでの運用から開始すると良いでしょう。
ナレッジマネジメントを進めていく際に気をつけるべきポイントを2点ご紹介します。
知識を共有するのに慣れていない従業員の意識を変えていく必要があります。特に、優秀な従業員は多忙であることが多く、積極的な情報共有に協力してもらえない場合もあります。手軽に共有してもらう工夫を検討しましょう。
情報共有の手段の一つとしては、ITツールの利用が便利です。導入に成功すれば、全国に広がる社員同士が情報を瞬時に共有できるからです。遠方の社員同士や他部署の社員同士が直接やりとりできる社内SNS、資料などの共有が手軽にできる社内ファイルサーバなどが例としてあげられます。クラウド型のツールであれば、複数の機能を包括したサービスを利用できます。
ナレッジマネジメントをツール利用で導入する際のメリットを解説します。
専用ツールを利用することで、自然な形での知識共有を進めることができます。スマホの普及でSNSやチャットツールが当たり前のように使われていますので、操作感が近いツールを導入することで、新システムに対する従業員の心理的なハードルを下げることが可能になります。日常生活のように活発に使用してもらえるようになれば、管理者側が努力をしなくても、自然な形で社内に最新の知識やノウハウがたまっていくことでしょう。
大きな会社では部署ごとに異なった情報共有ツールを使っているケースもあるかもしれません。システムが異なれば情報共有の障害にもなりかねないですが、他システムとの連携が可能なツールを選べば、システム上のハードルも回避することも可能です。組織を大きくする際の課題である部署同士の連携をスムーズにすることができれば、会社全体としての業務改善がしやすくなるはずです。
ナレッジマネジメントツールは知識を拡散するだけでなく、必要な知識だけを抽出するのにも役立ちます。レベル別に応じた社員教育や、分野別に応じた顧客対応マニュアルの作成など、全社から集めた情報を個別に最適化できる点も、ツール導入のメリットになります。
ナレッジマネジメントツールを導入する際の選定ポイントを見ていきます。
ツール導入の際に見るべきポイントは操作のしやすさです。ツールの使用頻度が多くなるのは当然ながら一般の従業員だからです。誰でも感覚的に使えるような、分かりやすい操作性を備えていることが、導入のしやすさを考える上でのポイントになるでしょう。
パソコン以外のデバイスとの連携ができるかどうかも確認しましょう。スマートフォンやタブレットの方が持ち運びや操作がしやすいため、連携できると情報共有がよりスムーズになるはずです。
ツールで管理する情報は社内の機密情報でもあります。情報ごとにアクセスできる権限を付与するなど、情報漏洩などには十分に注意する必要があります。
社内システムの変更は従業員にとって大きな変革です。情報共有が一番の目的ですから、システム利用が負担にならないよう、一部署からなど規模を小さく始められるツールを選ぶとスムーズな変革を遂行できるはずです。
ナレッジマネジメントについて解説しました。ナレッジマネジメントとは、企業内に分散している知識・経験・ノウハウを共有し、業務の効率化や生産性を高めるための経営手法です。ツールを利用することで、効率的で効果的なマネジメントができるようになります。
Zendeskでは、ナレッジマネジメントに必要な顧客管理、社員学習システムの管理、FAQなどのナレッジベースなどの機能を利用することができます。社内のナレッジマネジメント体制の構築を検討している場合、ぜひご相談ください。