導入事例・ブログ
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公開日 : 2022/12/06 / 最終更新日 : 2024/05/27
民間企業を中心にデジタル技術をもちいた組織改革(DX)が広まっていますが、自治体でもDXに取り組む動きが活発化しています。近年話題になったハンコやFAXなど、従来の業務プロセスが根強く残る自治体は多くありますが、職員の減少などにより、業務の効率化対策が急務となっています。総務省はDX促進のために6つの重要取り組み事項を策定し、住民へ提供する行政サービスの品質向上を目指しています。この記事では、自治体DXの概要や推進のためのポイントについて解説します。
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語で、デジタル技術をもちいた業務効率化や組織改革を目指す取り組みのことを指しています。ペーパーレス化やテレワークなどは、デジタル技術をもちいた業務効率化の分かりやすい例で、DXの一部という位置付けになります。
DX化はIT企業を中心とした民間の動きが発端となっています。インターネットやスマホの普及で顧客のニーズは多様化しており、企業との関わり方は店舗でのリアルなものだけでなく、アプリやサイトを通したオンラインでのつながりも増えています。どのような形でつながろうとも良質なサービスを体験できるように、DXの考え方が重要視されるようになりました。自治体においても、民間企業との連携や住民への行政サービス向上のために、国が主導となりDX導入が推進されています。
自治体におけるDXの推進は、令和2年12月に総務省より「DXに向けた基本方針」が発表されたことでスタートしました。平成29年から経済産業省によるIT導入補助金制度が始まり、令和3年9月からはデジタル社会の形成に向けて新たにデジタル庁が誕生しています。
各省庁がDXを推進している理由としては、住民の利便性向上と業務の効率化、民間企業とのスムーズな連携などがあります。顧客のさまざまなニーズに応えるために進められるDXは、自治体においては住民のニーズに適応していくための手段となります。また、DXに向けて各自治体の業務が効率化されることで、人的資源を行政サービスに集中することができるため、住民の利便性を向上させることにもつながります。
さらに、利用者の多い自治体には多くのデータが集まる環境が整っているため、蓄積するデータ様式の統一化をはかり、民間企業と連携して新たな価値を生み出す、既存の概念にとらわれないビジネスの立ち上げが期待されています。
DXが解決する自治体の課題は大きく2つあります。
1つ目の課題は、自治体の職員が減少している点です。総務省の統計データによると、全国の自治体の職員の数は、平成6年をピークに48万人の減少となっています。令和3年度も前年度比4万人弱と記録されており、今後も職員の減少は続くと見られています。
職員の減少による懸念点としては、行政サービスの低下です。年々減少する職員だけで以前と変わらない量の業務をこなさなければならないため、業務の効率化が進まなければ、職員は長時間労働を強いられることになり、行政サービスの品質が下がってしまいます。
また、特に人口の少ない過疎地域では職員の減少も顕著となっており、すでに十分な行政サービスを届けることが困難になっています。極端な例になると、インフラの整備やメンテナンスが行われないため、住民が今の地域で生活をすることすら難しい状況になるケースもあります。地域住民に十分な行政サービスを届けるために、業務の効率化を含めたDXへの取り組みが急務となっています。
2つ目の課題は、自治体の業務に現在もアナログ文化が根強く残っている点です。近年で話題になった例としては、脱ハンコやFAXの廃止、インターネット接続の許可制度などがあります。ハンコの代わりに電子署名が推奨され、FAXを廃止することでペーパーレス化の促進をはかる狙いがありました。
インターネット接続については、総務省からセキュリティの見直しが公表されてはいますが、多くの自治体で「インターネット接続はリスク」という考えが染み付いており、、習慣化している業務のため改善には至っていないのが実情です。アナログな業務を継続することで発生する弊害は、単純なルーティン作業に多くの時間を割かなければならないことです。上述の通り、自治体の働き手は年々減少し続けているため、業務効率が改善されなければ、行政サービスの品質低下をまねくことになります。
総務省では自治体のDXを促進するために、6つの重要取り組み事項を設定しています。
1つ目の取り組みは、自治体の情報システムの標準化・共通化です。各自治体にパソコンやネットが導入されたのは1995〜96年頃になりますが、以降大きな制度改革などはなく、当時の機器を未だに使用している自治体もあります。また、自治体ごとにデータ管理の仕様も異なります。
そこで政府は2025年度に目標時期を定め、自治体の主要な17業務については国が策定する水準を満たしたシステムへの移行を進める方針を公表しました。Gov-Cluod(仮称)と呼ばれるクラウドシステムを構築することで、各自治体で共通のシステムを使えるように体制を整え、スムーズな行政処理を目指します。主要な17業務とは、住民票や個人・法人住民税、国民健康保険や国民年金、介護保険や児童手当の手続き管理などを指しています。2025年度のシステム構築までに1508億円の国費を投じて改革を実施します。
2つ目の取り組みは、マイナンバーカードの普及促進です。マイナンバーカードは平成28年1月からスタートした制度で、行政手続きのオンライン申請や身分証としての利用、コンビニなどで行政書類を取得する際に利用できます。全国への普及率は令和4年10月時点で50%を突破していますが、総務省は令和4年度末に国民のほとんどが保有していることを目標と掲げており、人的資源の増員や窓口の増設などの対策を進行しています。また、より多くの人の利便性を高めるために、出張申請や臨時交付窓口を設置する自治体へ、資金的支援も積極的に実施しています。
3つ目の取り組みは、行政手続のオンライン化です。地域住民がマイナンバーカードを利用した行政手続きができるように、専用システムであるマイナポータルの構築と実装を進めています。具体的には、子育てに関する15の手続き、介護に関する11の手続き、被災者支援の手続き、自動車保有に関する4つの手続きの計31手続きをマイナポータルでおこなえるようになります。
マイナポータルとは、国民が無料で利用できるウェブサービスで、役所に直接行かなくても行政に関するサービスの情報を検索でき、そのまま電子申請をすることができます。また、確定申告のための「e-Tax」や年金手続きのための「ねんきんネット」との連携も可能なため、税務署や年金事務所へ行かずに手続きを完了できるようになります。各自治体とも接続できるようにシステムの再構築、サービスの使いやすさやサイトの見やすさの改善にも取り組んでおり、全国民が気軽に使えるサービスの実現を目指しています。
4つ目の取り組みは、AI、RPAの利用促進です。AIは人工知能の英訳で、機械が自主的に判断して情報処理や機械操作などを進めることができる高機能な技術です。RPAはロボテックプロセスオートメーションの略で、業務の自動化を意味し、AIも高機能なRPAに分類されています。つまり、自治体の業務にも自動化システムを導入することで、職員の業務負担を減らすことを推進しようとする取り組みになります。
具体的には、自治体スマートプロジェクト事業を発足させ、人口規模ごとに自治体を区分し、試験的にAI、RPAを導入してさまざまな課題を検証しています。運用が進めば各自治体でシステムの共同利用や学習データの共有をおこない、その活動を全国に広げることで、システムの標準化を目指しています。システムを運用するためには各自治体にそれぞれ専門の人材を確保する必要がありますので、デジタル人材の確保や育成をするための体制構築についても並行して進めています。
5つ目の取り組みは、テレワークの推進です。コロナウイルスまん延防止策の一つとしてテレワークや在宅ワークが全国的に活発になりました。自治体でも、総務省が作成したガイドラインを元に、テレワークによる働き方を推奨しています。しかし、セキュリティ上の理由から、自治体ではすでにLGWANと呼ばれる独自ネットワークが構築されており、インターネットを通して役所内の資料へアクセスすることができない仕組みとなっています。
自宅や出張先から資料の閲覧や検索などはできないため、自治体では思うようにテレワークを浸透させることが難しい状況にありました。しかし、自治体内のネットワークと自宅との間にLGWAN-ASPというデータセンターを設けることで、セキュリティを保ちながら、自宅や出張先から役所内の資料にアクセスできるようになりました。テレワークの導入事例を各自治体に共有することで、自治体でもテレワークを積極的に導入できる体制を整える取り組みがされています。
6つ目の取り組みは、セキュリティ対策の徹底です。総務省では2004年からテレワークに関するセキュリティガイドラインを策定しており、現在では2021年に改訂した第5版のセキュリティガイドラインが最新のものとなっています。テレワークの導入には情報漏洩などのリスクが伴うため、クラウドサービスを利用する際の注意点や全てのアクセスを信用しないとするゼロトラストセキュリティの考え方について、ガイドライン内で解説しています。
また、状況に応じた7種類のテレワーク方式の概要紹介や導入する際にチェックすべき5つの軸など、それぞれのメリット・デメリットを交えながら丁寧に解説しています。セキュリティガイドラインはテレワークの導入を検討する企業向けに策定されたものではありますが、各自治体にもテレワークが推奨されているため、自治体が導入する際の指針としても利用されています。
未来の自治体の状況と職員の負担を考えると、自治体DXへの取り組みは急務となりますが、検証をせずに大きな変化を導入すると、業務に支障が出る可能性があります。できるだけ職員に負担をかけずに、かつ着実にDXを進めるために、効果の検証をしながら小規模に始めることが大切です。 ペーパーレスやテレワーク、セキュリティ強化など、目の前の課題に対する効率化を推し進めることで、効果も実感できますので、職員の協力を得ながらDXを推進できるはずです。小さい成功を広げていくイメージで、徐々に取り組みを浸透させていくとよいでしょう。
DX導入の進捗は自治体ごとに異なるため、進んでいる自治体の取り組みを参考にして、それをそのまま自分たちに当てはめても、同じような効果が得られるとは限りません。DX導入を進める際は、職場での課題の洗い出しをおこなうことから始めます。抱える課題は自治体ごとに異なるため、自分たちが何に困っていて、どのような解決策が適切なのかを検証する必要があります。目の前の課題解決が組織全体の変革につながるよう、俯瞰した目線をもって対策を講じることが大切です。
DXの推進には、導入の過程で得られるデータの蓄積と分析、効果的な活用が欠かせません。専用の管理ツールを導入することで、集めたデータを一元的に管理することができますし、ツールの機能を利用することで、業務の効率化や自動化を進めることが可能になります。しかし、慣れないツールの導入は職員や利用する住民の不安要素でもありますので、負担がかからないように段階的な導入を進めます。DX導入による業務の自動化や手続きの効率化が、職員の働き方を改善し住民の利便性につながるように、慎重に検討しましょう。
自治体DXについて解説しました。自治体へのデジタル技術の導入やDXの推進には課題がありますが、行政サービスの品質を維持していくためには欠かせない取り組みになります。DXの導入によるメリットは多くありますが、はじめのうちは慣れない作業が増えるため、職員の負担にならないよう、小さい検証から進めていくことが大切です。
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