導入事例・ブログ
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公開日 : 2022/12/22 / 最終更新日 : 2024/05/27
業務のデジタル化を推進する動きとして、国が推奨しているDXを耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。DXとは、デジタル技術をもちいて業務だけでなく組織や風土へ変革をもたらすための取り組みです。DXに向けた活動の最も基礎となるのがデジタイゼーションです。この記事では、デジタイゼーションの概要とデジタライゼーションとの違いについて解説します。
目次
デジタイゼーションとは、業務で使用するアナログな資料や製品をデジタル化することです。コロナウイルスまん延防止策の一つとしてテレワークの導入などが注目されましたが、IT関連の企業など、デジタイゼーションが浸透している企業ほど素早く対応していたことがメディアなどでも取り上げられていました。国としてもDXと呼ばれるビジネスのデジタル化を推進しており、ガイドラインの策定や補助金の制度化などさまざまな取り組みをしています。
経済産業省が公表しているDXレポート内では、デジタイゼーションを「アナログ・物理データのデジタル化」と定義しています。デジタイゼーションの最も分かりやすい例としては、紙の資料をデータに変換して保管することです。ペーパーレス化とも呼ばれていますが、資料をデータ化してパソコンやネットサービス上に保管することで、資料内にある情報を素早く検索でき、保管場所を確保するためにスペースを開ける必要がないため、紙で保管するよりも管理するためのコストを削減し、利便性が向上します。
他にも、客先を訪問して実施していた対面での商談はオンラインツールを活用した商談に切り替えたり、大量の紙に印刷してカバンに詰めていた資料をデータにしてタブレットに収納したり、エクセルの表に手作業でデータ入力していた業務に管理ツールを導入してボタン一つで瞬時に完了させるなどがあります。デジタイゼーションは、業務のデジタル化や働き方を多様化させるための最も基礎的な手段でもあります。
デジタイゼーションによく似た言葉にデジタライゼーションがあります。デジタライゼーションとは、業務プロセスのデジタル化を指しており、デジタイゼーションより1段階進んだデジタル化として位置付けられています。
デジタイゼーションの例として紙の資料のデータ化をご紹介しましたが、デジタライゼーションではデータ化した資料をクラウド上で複数の従業員と共有し、それぞれが異なる場所から共同で編集作業に取り組むようなイメージです。
小売店でのデジタライゼーションの事例をご紹介します。ある小売店では、販売集計はレジ操作、商品の在庫はエクセルで管理、新規の発注はFAXやネットを利用しており、一般的な小売業の業務プロセスではありますが、それぞれの業務に連携がない状態でした。そこで、販売から発注まで一括管理できるシステムを導入し、一つの画面で全ての業務をこなせるようになりました。また、システムに蓄積されるデータを分析することで、さらなる業務の改善を可能にします。デジタイゼーションで効率化された各業務に対して、デジタライゼーションで適切なツールを導入し連携させ、業務プロセス全体をデジタル化させることができます。
デジタイゼーションを活用することで得られるメリットとしては、ドキュメントなどの資料を簡単に人と共有できるようになることです。業務に必要な資料を紙で管理している場合、管理する資料の数が増えてくると、共有どころかどこに保管したのかさえ不明になることがあります。
紙の資料をデータに変換することで、資料保管室に行くことなく、検索機能で素早く資料の場所にたどり着くことができます。また、データをパソコン上だけではなくクラウドなどのネット環境に保管することで、ネットにつながる他の人にも資料を素早く共有することができるようになります。
事務所内の従業員から外出中の従業員へ必要な資料を共有できるため、出張の際に資料を会社に置き忘れてしまったとしても、素早く手元に資料を準備できます。データ化された資料は閲覧だけでなく編集もできるため、遠く離れた従業員同士が共同で編集作業を進めることも容易になります。
業務で使用するあらゆるものがデータ化されることで、環境にやさしく、経済的にもやさしいビジネスの実現を可能にします。その理由は、印刷作業を大幅に減らすことができるからです。印刷は以前から環境への影響が大きく問題視されていました。印刷するのに使用される紙は森林を伐採することで生産されています。過度な森林伐採は生態系に悪影響を与え、地球温暖化をもたらします。印刷過程で排出される二酸化炭素も温暖化を加速させる要因となりますし、印刷方法によっては有害物質を排出する場合もあります。
また、印刷がズレたり不鮮明な場合、多くの人が廃棄するでしょう。たとえ裏紙として再利用していたとしても、紙の無駄遣いであることに変わりはありません。事務所で紙を印刷するだけであれば、環境を汚染しているということをそこまで意識することはないでしょう。しかし、実際には印刷するたびに、確実に環境への悪影響は進んでいるのです。資料のデータ化をすることで、印刷作業を減らすことができますし、印刷に必要なトナー代も節約できますから、経済的なメリットも実感できるはずです。
業務資料のデータ化は、セキュリティ面でも優れています。なぜならデータで資料を保管することで、不正があれば履歴が残り、すぐに検知することができるからです。社内での業務が従来のアナログ仕様から変化がない場合、改ざんや不正利用のリスクを高めることになります。
契約書などで内容を訂正する場合、ペンで二重線を記入し、ハンコで修正の証明をおこないますが、担当者が不在の場合、他人でも容易に担当者のハンコを不正利用することができます。ハンコの利用はデータのように記録を残すことができませんから、ハンコを他人が利用したとしても、本人の意思として認められてしまいます。ハンコの不正仕様を防止するために承認までのプロセスを複雑にしてしまうと、意思決定までに時間がかかるなどのデメリットが発生してしまいますので、業務効率化の観点でいえば逆効果になってしまいます。
資料をデータ化することで、データ自体にパスワードを設定することができますし、データへのアクセス制限を設定することで、資料を閲覧・編集する人を限定することが可能になります。
デジタイゼーションを取り入れることで、情報の整理が誰でも簡単にできるようになります。資料データをパソコンのどこに保管したかを忘れてしまったとしても、検索機能を利用することで、瞬時に目的の資料を見つけ出すことができるからです。
紙の資料の場合は通し番号やあいうえお順に管理されることが多く、欲しい資料がありそうなエリアに見当をつけて、端から順番に探していく必要があります。資料名の冒頭の文字がわからず、一部しか思い出せない場合、該当資料を見つけることはほぼ不可能になることでしょう。
データで保管している場合、資料の冒頭の文字がわからずとも、一部でも思い出すことができれば、膨大な資料の中から候補を絞ることができ、最悪その絞り込んだ資料を一つひとつ確認していけば目的の資料にたどり着くことができます。また、保管した資料を整理するときも、昇順・降順を選ぶだけで一瞬にして作業が完了します。
デジタイゼーションは、従業員の作業効率を高めるだけのものではありません。業務のデジタル化を上手に活用することができれば、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上にも貢献できます。
カスタマーエクスペリエンスとは顧客体験の略で、商品やサービスでの体験はもちろん、商品購入前のお問合せ対応や購入後のアフターサービスなども含めた顧客満足を評価するための考え方です。店舗での接客だけでなく、ネットの情報やSNSでの口コミなど、顧客との接点はあらゆる場所に点在しています。顧客との接点となる場所を全て洗い出し、どの接点からでも高い満足度を実現するための手段がデジタイゼーションです。郵送で商品やサービスの請求書が送られてきた場合、多くの人がせめてメールにしてほしいと感じるはずです。
デジタイゼーションが既存の業務にもたらす主な効果は、作業効率の向上と作業スピードの向上、人為的ミスの削減の3つです。デジタル技術の導入により、ツールやシステムが自動的に作業をこなせるため、自分の仕事をある程度ツールやシステムに任せられるようになります。ツールやシステムに仕事を任せることで、新たに空いた時間で他の作業を同時に進められるため、作業効率が向上し、生産性を高める効果を実感できるはずです。
また、ツールやシステムを稼働することで、人の手作業よりも何十倍・何百倍のスピードで業務が処理されていきます。人が一日かけてこなしてきた作業を数分で終わらせてしまうこともあるでしょう。人はツールやシステムが正常に動いていることを確認するだけで済むため、従業員の負担を減らすことにつながります。
さらに、ツールやシステムを作業に組み込むことは、人の手による作業をなくすことになりますので、人為的なミスを減らすことにつながります。機械による作業ではヒューマンエラーのようなミスは発生せず、長時間稼働も可能になります。
デジタイゼーションを進める手順としては、業務の分解・ツールやサービスの検討・デジタイゼーションの実行・デジタル化の拡大の4ステップで進めます。まず始めに、業務の分解をおこなっていきます。どのような業務をデジタル化できるかを確かめていく作業です。紙で保管している書類はデータ化することができますし、作成手順や管理方法などもツールを使えば効率化や自動化をすることができるでしょう。担当者を決めるなどして、全ての業務の洗い出しと分解をおこないます。
続いては、業務のデジタル化に必要なツールやサービスを検討します。書類のデジタル化には専用のスキャナが必要になりますし、管理をデジタル化するにはクラウドサービスの導入が必要になります。ツールやシステムの検討まで進んだら、デジタイゼーションを実行しましょう。その際は、実行前後の効果検証をおこなうため、作業時間やミスの頻度、作業にかかる費用などを記録しておくとよいでしょう。
他にも比較をしたい項目があれば記録をしておきます。デジタイゼーションの効果をある程度実感できたら、デジタライゼーションやDXの実現に向けて、業務プロセスのさらなるデジタル化を進めます。また、業務効率化を横展開するために、他の部署への導入も検討していきましょう。
デジタイゼーションは、デジタライゼーションやDXの実現に向けた基礎的な活動です。既存の製品を活用する、スピーディに導入を進めるなど、業務をデジタル化するまでの一通りの流れに慣れることが大切です。業務のデジタル化を鮮明にイメージできていないにも関わらず、既存の業務の流れを大きく変更することは得策ではありません。
また、ツールやシステムをイチから構築するような本格的な取り組みも、デジタイゼーションの段階では必要ないでしょう。デジタイゼーションは業務の一部をデジタルツールなどに切り替えるだけで実行できるため、既存のサービスでも十分に効果を得られるはずです。
業務のデジタイゼーションを推進する際は、できるだけ時間をかけずにスピーディに完結させることを優先するとよいでしょう。業務の流れ全体をデジタル化して再構築する大掛かりなものではないため、事前に計画を立てて準備を進めておけば、スムーズに導入を進めることができるはずです。日常の業務に支障をきたさないよう、ツールやシステムのカスタマイズなども最小限に止めておきましょう。
はじめのうちから本格的にカスタマイズを取り入れてしまうと、柔軟に仕様を変更することが困難になりますし、また新たなシステムを導入したい時に連携が取れなくなる恐れがあります。一部の業務の改善のためだけに、入念なカスタマイズをする必要はありません。
社内業務へのデジタル技術の導入は、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)の3段階で進みます。DXの取り組みとしては、最終的に、デジタル技術を導入して新たなビジネスモデルを創出、組織や風土の変革など、企業としての仕組みさえもデジタル化していくことがゴールとされています。
DXの実現にはデジタイゼーションを欠かすことはできませんが、デジタライゼーションとDXには明確な違いがないため、両者を同時に進めることが、DXを推進しようとしている企業の中では一般的な方法とされています。
デジタル技術の導入は、業務の生産性を向上させ、オフィス勤務にとらわれない柔軟な働き方の推進にもつながります。国が推し進めるDXの狙いとしては、国際的な競争優位性の強化も含まれていますので、海外顧客の取り込みや海外展開を検討している企業にとっても、業務のデジタル化は欠かせないものとなるでしょう。デジタイゼーションは、DX推進のプロセスの一つとして、大きな役割を担っています。
デジタイゼーションについて解説しました。デジタイゼーションとは、デジタル技術をもちいて業務プロセスの改善や組織の変革を目指すデジタルトランスフォーメーションの中で、最も基礎的な活動や取り組みのことを指しています。資料のデジタル化や一部の業務をツールに置き換えるだけでもデジタル化の歩みを進めることになります。いきなり大きな変革をもたらさなくても、一つずつできることからデジタル化を進めることが大切です。